三重県伊勢神宮につながる伝説の上伊勢神明神社(皇大神宮)。
伝説によれば当神社は、天照皇太神宮と称し、その起源は遠く伊勢神宮仮鎮座の跡なりとして尊崇され、境内には周囲十三米、高さ五十三米におよぶ巨大なるお祓い杉を中心に老杉うっそうと繁る森厳なる神域なりしも、九頭竜川電源開発により全戸移住して無人の境となる。
祭神は九頭竜川沿岸の聖地に建立する新神殿に水没地の各神社祭神を合祀することになり、永く遺跡を表示するため伊勢氏子の総意をもって碑壱基建設し、茲に銘記す。
昭和四十一年七月十六日 伊勢区の「碑文」より
つまり当社は、伊勢の皇太神宮が、五十鈴川の畔に鎮座される前に、一時この地に鎮座されたと地方住民の間に伝承されている社で、住民は皇太神宮と呼び、社殿、社叢、神域ともにこの地方では希に見る規模の社である。
当社本殿のご神体は、径24.0 の木版に布を張り漆をかけて仕上げた懸仏で、雲上の蓮台に座する十一面観音に、日、月が配してあるものであった。
製作の年代は明らかではないが、手法表現等からみて、室町時代のものと考えられた。